施工前
施工後
・建物状態
最大沈下量 西面-350㎜
築50年(鉄筋不足や劣化が見られ慎重な傾斜復旧作業が要求される)
・直下地盤状態
-4m付近まで砂質土や粘性土の軟らかい層がある。
-5m付近に砂質土の固い層がある。
-7mまで砂質土が続き以降はシルトや粘性土の軟らかい層が連続する。
-26m以降は非常に固い砂質土が連続する。
地下水位は-2.3m付近
・建物周囲状態
商業地域で南北道路は建物壁面まで約60cmと狭い。アップする西側は鉄骨店舗となっており壁面まで約1.2mで店舗設備機器が並ぶ。±0になる東側は木造住宅となっており壁面まで約80cmと狭い。
・工事計画
既存建物の補強も兼ねて鋼管杭アンダーピニング(圧入杭)でのジャッキアップを計画しましたが工事費用が高額になる為計画中止し、多点インターバル方式の薬液の注入圧力により建物の傾斜復旧を行うことに決定した。見えない土中での注入作業になり、直下地盤も軟らかくヒービング(注入圧力による周囲の盤ブクレ)が想定される為、道路や近隣建物側にヒービング対策を計画しました。南北道路面は地中遮断壁による注入薬液や注入圧力の遮断。西側は傾斜復旧初期にかかる過度の注入圧力を抑制する為、鋼管杭を設置し、油圧ジャッキにより西側の建物重量を軽減させ、注入圧力による鉄骨店舗へのヒービング対策を計画した。東側は±0となり注入圧力がかかりにくいが建物の傾斜が1mで2cmの勾配があり基礎の根入れが-2m下まで有る為、壁面が近隣住宅側に4cm接近する。この4cmを土中で吸収するように壁面の間の土砂をほぐして計測調整し隣家の現状維持を計画した。薬液注入による傾斜復旧時は細心の建物や周辺のレベル計測、調整を行い、建物の確実な傾斜復旧と周辺を現状維持する。
・計画の効果
平野部等直下地盤が軟らかい場合の重量建物の薬液注入による傾斜復旧工事に、外周部に鋼管杭アンダーピニングを並行利用する事で中央部のみの注入圧力で傾斜復旧でき、ヒービング対策や精度の高いジャッキコントロールができ、全面鋼管杭修正より経済的に傾斜復旧する事ができ対比すれば約1/2までに収まった。軟弱地盤でも安価に確実に工事ができるので既存建物の有効利用につながる。